アンのギルバート

『赤毛のアン』の原書で少しずつ英語学習しています。英語のタイトル「Anne of Green Gables」は、緑の切妻屋根のアンという意味です。アンの翻訳小説でおなじみの言葉「腹心の友」は bosom friend 、「想像の余地」は scope for imagination です。原文は初級レベルの英語力ではかなり難しいのですが、物語の中に散りばめられた美しい言葉や名言が学習意欲を掻き立ててくれます。

赤毛のアンで英語レッスン

赤毛のアンの英語の本

『赤毛のアン』の本で英語学習を始めました。カナダで見つけた原書「Anne of Green Gables」は300ページもある分厚い本で、初級レベルの英語力ではかなり難しく、最後まで読み通せるのだろうかと心配になります。

まず驚くのが文章の長さ!第1章「Mrs.Rachel Lynde is Surprised」の最初の文だけでなんと14行もあります。文中には知らない単語も多く、いちいち辞書を調べているとなかなか先に進めません。

でも幸いなことに「アン」は何度も読んでいるのでストーリーはわかっています。一字一句間違わずに翻訳しようとすると挫折するので、とにかく細かいことは気にしないで読み進めてみることにしました。

勉強という意識を一旦忘れて、アンの物語を想像しながら英語の世界を楽しむことにしたのです。すると、「Barry’s pond」(バリーの池)など所々になじみの言葉が出てくるのでいつの間にか物語の情景が浮かんできて、英語を読む作業が少しずつ楽になってきました。

日本語に翻訳された『赤毛のアン』は最高のお手本!手元にある愛読書と原書を照らし合わせながら少しずつ読み始めてみたところ効果抜群でした。英語の原書を1から翻訳するのは大変ですが、日本語の『赤毛のアン』と読み比べることで英語学習が楽しくなってきたのです。

例えば、「well now」ははにかみ屋マシュウの口癖ですが、辞書で意味を調べると「さてと」、「それで」などと説明されています。そこで小説を読み返してみると、村岡花子さんと松本侑子さんは「そうさな」と翻訳されています。そう言えば、世界名作劇場アニメ『赤毛のアン』の中では、マシュウは「そうさのう」と言っていました。

「さてと」、「そうさな」、「そうさのう」・・・マシュウのセリフ1つとってもそれぞれ言い回しが違うことに気づき翻訳作業が楽しくなってきました。そして、翻訳の正解は1つじゃないのだからもっと気楽に原文を楽しんでもいいのでは?と思えてきました。

赤毛のアンの原題

『赤毛のアン』の英語の原題は「Anne of Green Gables」、緑の切妻屋根のアンという意味です。日本では翻訳者の村岡花子さんが娘さんの意見を参考にして「赤毛のアン」というタイトルに決められたそうです。

私が最初に出会った『アン』は村岡花子さん訳だったので、モンゴメリと村岡花子さんは切っても切れない関係。例えば、マシュウの口癖「Well now」は「そうさな」、「そうさのう」、「そうだな」など色々な訳し方がありますが、私はやっぱり「そうさな」が一番しっくりきます。

『赤毛のアン』は、ある6月初めの午後、マシュウ・クスバート(Matthew Cuthbert)が馬車に乗って出かける姿を見て、近所に住む噂好きのレイチェル・リンド夫人(Mrs. Rachel Lynde)が驚く場面から始まります。

第1章 レイチェルリンド夫人の驚きの一文だけ見てもかなり長いので、英語初級レベルの私には難しすぎます。そこで、どのように翻訳されているのか日本語の『赤毛のアン』を参照してみることにしました。

今回は日頃から愛読している村岡花子さんと松本侑子さんの『赤毛のアン』から引用させていただきます。お二人が翻訳された文章にはそれぞれ趣があり、翻訳の醍醐味が伝わってきます。

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Mrs.Rachel Lynde lived just where the Avonlea main road dipped down into a little hollow ,fringed with alders and ladies’eardrops and traversed by a brook that had its source away back in the woods of the old Cuthbert place; it was reputed to be an intricate, headlong brook in its earlier course through those woods, with dark secrets of pool and cascade ; but by the time it reached Lynde’s Hollow it was a quiet,well-conducted little stream,for not even a brook could run past Mrs.Rachel Lynde’s door without due regard for decency and decorum ; it probably was conscious that Mrs.Rachel was sitting at her window, keeping a sharp eye on everything that passed, from brooks and chiidren up , and that if she noticed anything odd or out of place she would never rest until she had ferreted out the whys and wherefores thereof.

ANNE OF GREEN GABLES (L.M.Montgomery)

長文なので、出だしの部分だけ抜き出してみることにします。まず、村岡花子さんが翻訳された文章を見てみましょう。

アヴォンリー街道をだらだらと下って行くと小さな窪地に出る。レイチェル・リンド夫人は、ここに住んでいた。まわりには、榛の木が茂り、ずっと奥のほうのクスバート家の森から流れてくる小川がよこぎっていた。

『赤毛のアン』(モンゴメリ著 村岡花子訳/集英社文庫)

続いて、松本侑子さんが翻訳された文章です。

レイチェル・リンド夫人は、アヴォンリーの街道が、小さな窪地へとゆるやかに下っていくあたりに住んでいた。まわりには、ハンの木や、淑女の首飾りと呼ばれる野生のフクシアの花がしげり、そして、カスバート家の古びた屋敷のある森から流れてくる小川が横切っていた。

『赤毛のアン』(モンゴメリ著 村岡花子訳/集英社文庫)

同じ作品でも言葉の選び方によって趣が異なるので、読み比べてみると翻訳の奥深さに魅了されます。いつも親しんでいる物語を翻訳という視点で読み返すとひと味違う面白さがあり新鮮な気持ちになります。

赤毛のアンの原書

赤毛のアンの原書「Anne of Green Gables」から、アン・ファンにとっておなじみの言葉をいくつかピックアップしてみます。村岡花子さんと松本侑子さんが翻訳された言葉を見比べてみると、英語を日本語に翻訳する楽しさや難しさなどが伝わってきます。

「bosom friend」はアンとダイアナの関係のように心が通じ合う間柄を表す言葉で、村岡花子さんと松本侑子さんは「腹心の友」、アニメでは「心の友」と翻訳されています。

「Lake of Shining Waters」は、ダイアナが住んでいるバリー家の池「Barry’s pond」のこと。村岡花子さんと松本侑子さんは「輝く湖水」、アニメでは「きらめきの湖」と翻訳されています。「Lake of Shining Waters」はプリンスエドワード島に実在する湖で、銀の森屋敷のモデルと言われるグリーンゲイブルズ博物館のそばにあります。

「Shore road」は、キャベンディッシュ(アヴォンリー)の海岸からセントローレンス湾の赤土の崖に沿った一本道。村岡花子さんと松本侑子さんは「海岸通り」、アニメでは「渚の道」と翻訳されています。

「White Way of Delight」は村岡花子さんは「歓喜の白路」、松本侑子さんは「歓びの白い路」、アニメでは 「喜びの白い道」と翻訳されています。

「scope for imagination」はアンがよく口にする言葉で、村岡花子さんと松本侑子さんは「想像の余地」と翻訳されています。

「raspberry cordial」はアンがワインと間違えてダイアナに飲ませてしまう飲み物で、村岡花子さんは「いちご水」、松本侑子さんは「木苺水」と翻訳されています。ちなみに、プリンスエドワード島のお土産屋さんで見つけた「raspberry cordial」はいちご色の炭酸水でした。

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「patchwork」は端切れをつなぎ合わせて作る手芸で、村岡花子さんは「つぎもの」、松本侑子さんは「パッチワーク」と翻訳されています。「パッチワーク」という言葉が日本で知られていない時代にわかりやすく伝えるには、想像を絶するご苦労があったことでしょう。

「quilt」は表地と裏地の間に薄い綿をはさみ縫い合わせるもので、村岡花子さんは「さしこ」、松本侑子さんは「キルト」と翻訳されています。

赤毛のアンで英語を学びながら1つ1つの言葉に注目すると、翻訳には想像の余地がたくさんあることがわかります。さらに物語の中には美しい言葉や前向きな言葉が散りばめられているので、いつの間にか感化され明るい気持ちになり元気がもらえます。英語学習と同時に人生の楽しみ方まで教えてくれるアンは最高の先生と言えるでしょう。

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