世界名作劇場アニメ『赤毛のアン』をもとに、アン・ブックスの魅力を辿ります。第3話は小説『赤毛のアン』(新潮文庫)第4章「緑の切妻屋根の朝」に該当するエピソードです。男の子を引き取るつもりだったグリーンゲイブルズのマシュウとマリラ兄妹のもとに、手違いでやってきた主人公アン・シャーリーが初めてグリーンゲイブルズで朝を迎える日のお話です。

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赤毛のアンとグリーン・ゲイブルズ

世界名作劇場アニメ『赤毛のアン』第3話の簡単なあらすじをもとにアンの魅力を探ります。アン・シャーリーが初めてグリーンゲイブルズで朝を迎えたのは、花々が美しく咲き誇る六月でした。グリーンゲイブルズの敷地には大きな桜の木があり、家とすれすれになるくらい近い枝に白い花がぎっしりと咲いています。リンゴの果樹園も満開で、花の下にはたくさんのタンポポが咲いています。窓を押しあげて、夢のような光景にうっとり見とれるアン…。「あたしが男の子でないから、ここの人はあたしをいらないのだ」という悲劇的な状況でさえ、美しいものを愛するアンの目はキラキラと輝いています。

想像の余地

「あたし、今朝は絶望のどん底に落ちてはいないの!朝はそんなところにはいられないわ。朝があるってほんとに素晴らしいことね」

「ゆうべは世界が寂しい荒野のように思えたけど…今朝はそんなことないわ。お日様が出てるので嬉しいの。でもあたし、雨の朝も大好きよ。朝はどんな朝だって面白いわね。その日のうちに何が起こるのか分からないので想像の余地がふんだんにあるんだもの」

世界名作劇場「赤毛のアン」第3話

想像力さえあれば、悲しい気持ちも楽しい気持ちに変えることができる!ちょっと見方を変えれば、ネガティブな感情もポジティブな感情に変わる!「想像の余地」はアンにとって人生の処方箋なのです。

りんごあおい”ボニー”

出会ったものに次々と名前を付けるアンは、窓から見た桜の木に “雪の女王”、窓辺に置いてあるリンゴアオイには”ボニー” と名付けます。「いったい花に名前なんかつけて何になるんだね?」と首をかしげるマリラにアンは言います。

「あら、たとえアオイの花でも、ひとつひとつに手がかりがあった方がいいわ。その方がよけい親しい感じがするでしょう?ただアオイと呼ばれるだけだったら、アオイも気を悪くするんじゃないかしら。おばさんだって、ただ女とだけしか呼ばれなかったらイヤだと思うの」

世界名作劇場「赤毛のアン」第3話

アンが出会ったものに次々と名前を付ける場面を見ていると、「雑草という名前の植物はありません」という植物学者・牧野富太郎さんの名言を思い出します。どんなに似ていても1つとして同じものはない、みんなかけがえのない存在…。名前にこだわるアンのエピソードには、原作者モンゴメリのメッセージが込められているような気がします。

マリラは「あんな子は今まで見たことも聞いたこともないよ」と、あっけにとられながらも、「マシュウの言う通り確かに面白い子ではあるね」と独り言を言います。でも「女の子を家に置いて何になるっていうんだね」と思っているマリラは、まだアンを孤児院に返しにいくつもりなのです。

森のとびらをあけて

ぼんやり外を眺めているアン…。アニメの映像には『赤毛のアン』の挿入歌「森のとびらをあけて」が流れています。

森のとびらをあけて
さがしにおいで
グリーン・ゲイブルズのアン
赤い髪の女の子
さがしにおいで
みえないたからものを
まぶしい夢を
「呼んでいるのは だれ」


赤毛のアン挿入歌 「森のとびらをあけて」

グリーンゲイブルズのまわりにある花や小川の何もかもが “アン、アン、私の所へいらっしゃい”と呼んでるようだけど、「そういうものから引き離されるくらいなら、好きにならない方がいいんですもの」と、アンは外に出ようとしません。

早めの昼ごはんの後、「兄さんは行きそうにもないから、あたしがホワイト・サンドまで行ってこの問題を片づけてきます」と、マリラはアンを連れて出かけてしまいます。

ジェリー・ブート

マシュウはアンがグリーンゲイブルズに引き取ることを望んでいるのですが、「ジェリー・ブートの奴が今朝やって来たんで、夏の間手伝いに来てくれるように言っといたがな」とマリラに言うのが精一杯。「あの子をグリーンゲイブルズに置いてやろう」とはっきり言えなかったことをしきりに後悔し、うらさびしげに、アンとマリラを見送るのでした…。

「クリーク(町の名)から男の子のジェリー・ブートがけさ、ここへきたんだがね、わしはこの夏あの子を雇おうと言ったんだよ」

『 赤毛のアン 第4章』新潮文庫

ジェリー・ブートは小説『赤毛のアン』では名前しか出てきませんが、アニメでは農場の働き手として時々登場します。食いしん坊でちょっとお調子者のジェリー・ブート。 第33話「クィーン組の呼びかけ」には、アンが食べたリンゴに”猫いらずを塗った”と嘘をついてからかうエピソードもあります。オリジナルのエピソードが追加されている点もアニメならではのお楽しみと言えるでしょう。

アニメ「赤毛のアン」

アニメ『赤毛のアン』を制作された際、 高畑勲監督ほかスタッフによるロケハンは『赤毛のアン』の舞台、カナダ・プリンスエドワード島に出向き、グリーンゲイブルズの外観や内観、立地条件などに矛盾が生まれないよう、入念な下準備を行ったそうです。

アンが過ごした19世紀後半のインテリアや四季折々の美しい自然…。アニメ『赤毛のアン』には作り手たちの思いが溢れ、魅力的なアンの世界をさらに盛り上げてくれます。挿入歌やオリジナルのエピソードもアニメならではのお楽しみ!小説との違いを見比べながら味わうと、新しい発見があって楽しいです。大人になった今だからこそわかるアニメの魅力!アンをきっかけに世界名作劇場の再入門はいかがですか。

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