世界名作劇場アニメ『赤毛のアン』をもとに、アン・ブックスの魅力を辿ります。第2話「マシュウ・カスバート驚く」は、小説『赤毛のアン』 第3章「マリラ・クスバートの驚き」に該当するエピソードで、グリーンゲイブルズに初めてやってきたアンの姿が描かれます。きこえるかしら ひずめの音 ゆるやかな丘をぬって かけてくる馬車…。アニメ主題歌と共に、プリンスエドワード島を馬車で駆け抜けるアンの姿が映し出される映像にときめくファンも多いでしょう。

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赤毛のアンときらめきの湖

世界名作劇場アニメ『赤毛のアン』第2話の簡単なあらすじをもとにアンの魅力を探ります。『赤毛のアン』の主人公アン・シャーリーは想像力豊かな女の子、お気に入りの場所に名前を付けずにはいられません。アニメにもきらめきの湖(輝く湖水)や樺の道など、アンが次々と名付ける場面が描かれています。

アンが馬車で初めてバリーさんの池を通った時、「どうして”バリーの池”なんて呼んでるの?平凡すぎるわ」と言い、「きらめきの湖」と名付けます。ちなみにアニメでは「きらめきの湖」というネーミングですが、村岡花子さんの翻訳では「輝く湖水」、原作では「 Lake of Shining Waters」です。それぞれ素敵な響きのある言葉ですね。

マシュウの馬車でグリーンゲイブルズに向かう途中、アンは期待に胸をふくらませながらドライブを楽しみます。プリンスエドワード島を舞台にした美しい風景描写も大きな魅力です。夕焼け空、きらめく夕日、水辺の映る花の影…。表現力豊かなアンのセリフにも心惹かれます。

「まあ!あのスモモたち、まるでつま先立ちして水の鏡に自分の姿を映そうとしている白い服の女の子みたい」

世界名作劇場アニメ「赤毛のアン第2話」

類まれなる想像力で平凡な状況も美しく変えてしまうアン。マシュウでなくてもアンの魔法にかかってしまいそうです。

eのつくアン

アンはeのつくAnneという名前の綴りにこだわります。グリーンゲイブルズに到着した日、マシュウとマリラが希望していたのは男の子だと知り、絶望のどん底に突き落とされた日でさえ、自分の名前に対する意志は固いのです。

「あたしが男の子じゃないからいらないのね!」と大泣きするアンに、マリラは戸惑いながらも「さあもう泣かないでおくれ、今夜はここに泊まればいいから」となだめ、名前を尋ねた時、「あたしのこと、コーデリアと呼んで下さらない?」 と懇願します。

マリラ:「それあんたの名前なのかい?」
アン:「いえ…あの…あたしの名前ってわけじゃないんだけど…あたしコーデリアと呼ばれたいの。素晴らしくエレガントな名前なんですもの。」
マリラ:「一体何のことかさっぱり分からないねえ… コーデリアじゃなかったら何ていう名前なんだね?」
アン:「アン・シャーリーよ… でももしアンて呼ぶんだったら…eのついた方のつづりで呼んで下さい… eがついてる方がずっと素敵に見えるのよ 」

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世界名作劇場アニメ「赤毛のアン第2話」

「つづり方でどんな違いがあるっていうんだね?」と、マリラは怪訝そうな顔をしますが、 それでも「分かったよ、それなら“e”がついてる方のアン!」と呼ぶ余裕があります。決して甘い顔を見せたりはしませんが、子どもの気持ちを無視したりしない優しい人だとわかります。もしかしたら、この時すでにマリラは心のどこかでアンを受け入れているのかもしれませんね。まだ自分では気付いていないようですが…。

それにしても、”e”のついたAnne の方が Annより素敵に思えてくるから不思議です。これもアンがかけた魔法のせいでしょうか?

野良仕事を手伝ってくれる男の子じゃないのでグリーンゲイブルズには置いてもらえない・・・。最大の悲劇的状況に陥ってしまったアンは、お茶の時間になっても何ひとつ喉に通りません。

「絶望のどん底にいる時のこと想像したことがある?…とても気持ちの悪いものよ。食べようとするとノドにかたまりが突き上げてきて、何も飲み込めなくなるの。たとえそれがチョコレート・キャラメルだったとしてもね。」

世界名作劇場アニメ「赤毛のアン第2話」

絶望のどん底に落ちているから大好きなチョコレート・キャラメルさえ食べられないと悲嘆に暮れるアン・・・。実はこの後、第9話と第10話にチョコレート・キャンディーの話が登場します。『赤毛のアン』のエピソードには様々な伏線が用意されているので、物語が進んでいくとさらに愉しくなるのが魅力です。

マシュウとマリラ

思いがけない行き違いで途方に暮れるマシュウとマリラ… 。「あの子は孤児院へ送り返すしかない。明日スペンサーの奥さんの所までひとっ走り行ってこなくちゃ」というマリラに、「あんなにここにいたがっているのに送り返すなんて何だかかわいそうだよ」とマシュウが言います。

「この子はその…疲れてるんじゃないかな。寝かせてやったらどうだな」というマシュウの言葉に促され、マリラはアンを2階の東の部屋に連れて行きます。服を脱ぎ散らかしたままベッドに入り、泣きながら眠りにつくアン…。

とても内気で女性とは口もきけないほどのマシュウがアンを引き取りたがっているなんて、まさに青天の霹靂!村岡花子さんの翻訳本では「たとえマシュウが、さか立ちしたいと、言いだしたとしてもマリラはこんなに驚きはしなかったであろう」と書かれています。

マリラ:「あの子が何かの役に立つとでも言うんですか?」
マシュウ:「わしたちの方であの子の役に立つかもしれんよ」
マリラ:「マシュウ・カスバート! あんた、あの子に魔法でもかけられちまったんじゃないんですか」
マシュウ: 「そ、そうさのう…あの子は実に面白い子だよ。駅からここへ来るまでのあの子のおしゃべりをお前にも聞かせたかったよ。」

世界名作劇場アニメ「赤毛のアン第2話」

内気なマシュウも無邪気なアンとは最初からウマが合い、アンのおしゃべりの良き聞き手となります。”女性となると、子どもであっても気味の悪い生き物”と思っているマシュウさえ虜にしてしまうアンのおしゃべりは、本当に魅力的です。

何度も読み返した『赤毛のアン』の物語を、アニメを通してさらに膨らませるのは至福の時間。きらめきの湖、eのつくアン、絶望のどん底…小説でおなじみのキーワードが心の扉の鍵になり、過去の自分を映し出します。きっとアンのファンの方なら、心のどこかで息づいているアン・スピリットが、アニメをきっかけにまた動き出すことでしょう。

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