子どもの頃、物語を読みながら主人公の家はどんな家?と想像しながら読んだ方も多いのではないでしょうか。『児童文学の中の家』(深井せつ子著)には、赤毛のアンの家「グリーンゲイブルズ」をはじめ、児童文学27冊の家や住まいが詳しく描かれています。簡単なあらすじも紹介されているので、児童文学ガイドとしても楽しめる一冊です。

赤毛のアンの家はどんな家?

『児童文学の中の家』(深井せつ子著)には、赤毛のアンの家をはじめ、『メアリ・ポピンズ』のバンクス邸、『ハイジ』の山小屋、『大きな森の小さな家』の丸太小屋など、児童文学の中に登場する住まいや暮らしが紹介されています。

「赤毛のアン」の家は『児童文学の中の家』の「異国の暮らしに触れる」という章に登場します。世界中の少女が憧れる切妻屋根の家・グリーンゲイブルズの外観や間取りのほか、質素だけど乙女らしいアンの部屋や作者モンゴメリの暮らした時代のイラストなどが紹介されています。深井せつ子さんの繊細で美しいイラストがとにかく素敵。簡単なあらすじも紹介されているので、児童文学ガイドとしても楽しめます。

グリーン・ゲイブルズには、一階にマシュウの部屋、キッチンと居間、応接間があり、二階にマリラの部屋、客用の寝室、屋根裏の物置などがありました。アンはここで生まれて初めて自分の部屋を持つことになります。

『児童文学の中の家』 深井せつ子著

▼関連記事:グリーンゲイブルズを訪ねて プリンスエドワード島旅行記

児童文学の中の家

『児童文学の中の家』には「赤毛のアン」のほか、「大きな森の小さな家」「ハリー・ポッターと賢者の石」「秘密の花園」「ロッタちゃんのひっこし」「飛ぶ教室」「やかまし村の子どもたち」「若草物語」など、児童文学の名作の中から27の家や住まいが登場します。

児童文学と言えば、ファンタジーや童話を思い浮かべる方も多いと思いますが、アガサ・クリスティーやコナン・ドイルなどの探偵小説も入っているので、きっとお気に入りの物語が見つかるでしょう。

物語や昔話の中に登場する建物や家具に焦点を当てた『児童文学の中の家』。絵本の挿し絵のような美しいイラストが想像力を掻き立て、子どもの頃に読んだ物語の世界へと運んでくれます。物語の簡単なあらすじや作品にまつわるエピソードなども紹介されているので、児童文学ファンには見逃せない1冊です。

著者の深井せつ子さんは、「(児童文学の中の家は)建築好きによる、名作の《新解釈》といってもいいかもしれません」とおっしゃっています。この本を読んだ後、「家」をキーワードに、お気に入りの物語をもう一度読み返してみたくなること請け合いです。

児童文学の中の家 [ 深井 せつ子 ]

27作品のタイトル

『児童文学の中の家』は、ファンタジーから寓話や童話、探偵小説まで幅広いジャンルの中から27の名作をピックアップし、作品にまつわる家や住まいを紹介しています。

「異世界への扉が開く場所」、「北欧の空気を感じる住まい」、「異国の暮らしに触れる」、「昔話と寓話の家」、「名探偵たちの晴れ舞台」と5つの章に分かれています。以下が全作品のタイトルです。

たんすの奥に広がる異世界、北欧の明るくかわいらしい子ども部屋、ひっそりと小人たちが借り暮らしをしている床下など、児童文学の中に登場する住まいが自由な発想で描き出されている『児童文学の中の家』。本の中に出てくる家は想像通りなのか、それとも全く違うのか・・・?それは読んでからのお楽しみです。

【児童文学の中の家】
異世界への扉が開く場所
・ライオンと魔女ーナルニア国ものがたり1(ルイス)
・ハリー・ポッターと賢者の石(ローリング)
・床下の小人たち(ノートン)
・ピーター・パン(バリー)
・不思議の国のアリス(キャロル)
 
北欧の空気を感じる住まい
・ロッタちゃんのひっこし(リンドグレーン)
・やかまし村の子どもたち(リンドグレーン)
・やかまし村はいつもにぎやか(リンドグレーン)
・やかまし村の春夏秋冬(リンドグレーン)
・ニルスの不思議な旅(リンドグレーン)
・ハムレット(シェイクスピア)

異国の暮らしに触れる
・大きな森の小さな家(ワイルダー)
・メアリ・ポピンズ(トラヴァース)
・飛ぶ教室(ケストナー)
・秘密の花園(バーネット)
・ハイジ(シュピーリ)
・赤毛のアン(モンゴメリ)
・若草物語(オルコット)

昔話と寓話の家
・雪の女王(アンデルセン)
・マッチ売りの少女(アンデルセン)
・幸福の王子(ワイルド)
・鶏の卵ほどの穀物(トルストイ)
・太陽の東 月の西(アスビョルンセン)

名探偵たちの晴れ舞台
・シャーロック・ホームズの冒険(コナン・ドイル)
・オリエント急行の殺人(クリスティー)
・ポケットにライ麦を(クリスティー)
・スタイルズ荘の怪事件(クリスティー)

「木骨造り建築を探して」、「物語を生み出す領主の館」、「現実を変える力をもったリンドグレーン作品」、「庶民として生きたアンデルセン」など、各章の最後にあるコラムも必見です。

さいごに

子どもの頃、本を読みながら空想の世界で築き上げた物語の家・・・。『児童文学の中の家』を読んでいると、いつの間にか物語の主人公がイキイキと動き出し、子ども時代の”あの日”に戻ったような不思議な感覚が味わえます。

”作品の中の子どもたちや家族を、そっと包んでいる家”を優しく掬い上げた絵本作家による児童文学ガイドは、子どもの頃ワクワクしながら読んだ思い出を追体験できる一冊です。

児童文学の中の家 [ 深井 せつ子 ]