
赤毛のアンの家「グリーンゲイブルズ」はカナダのプリンスエドワード島にあります。想像力豊かなアンが「世界で一番美しい島」と憧れた場所には、恋人の小径やお化けの森など物語に登場する風景が当時のまま残っています。今回はアボンリーのモデルとなったキャベンディッシュにあるグリーンゲイブルズを現地で撮影した写真と共にご紹介します。
目次
赤毛のアンの舞台 プリンスエドワード島

「赤毛のアン」の舞台として知られるプリンスエドワード島(Prince Edword Islan)は、カナダ東部セントローレンス湾に浮かぶ小さな島。想像力豊かなアンが「世界で一番美しい島」とよんだその場所は、三日月形のゆりかごに似ていることから「波間に浮かぶゆりかご」と称されています。
緑の草原と赤土の大地、そして青い空と海。色鮮やかな自然のコントラストが美しいプリンスエドワード島の風景は訪れた人を魅了します。
小説「赤毛のアン」の原作者ルーシー・モード・モンゴメリの故郷でもあるプリンスエドワード島には、グリーンゲイブルズ、恋人たちの小径やお化けの森など物語ゆかりの場所が当時のまま残っています。
赤毛のアン グリーンゲイブルズ

赤毛のアンの家『グリーンゲイブルズ』は、カナダ東海岸セントローレンス湾に浮かぶプリンスエドワード島のキャベンディッシュという村にあります。アボンリーのモデルになったキャベンディッシュは、 島の中心部シャーロットタウンから車で約40分です。
「赤毛のアン」の物語の中でグリーンゲイブルズはアンが暮らす家として描かれていますが、実際はモンゴメリの従兄弟たちが暮らしていた家で、モンゴメリ自身は別の場所で暮らしていました。
『赤毛のアン』の原題は『 Anne of Green Gables』 (緑の切妻屋根の家のアン)。グリーンゲイブルズは緑の切妻屋根という意味で、本を伏せたような形の屋根のことを切妻屋根と言います。緑色のとんがり屋根の家は、まさに思い描いていたアンの世界そのものです。
アンの家グリーンゲイブルズは緑と白のコントラストが美しい三角屋根の家。1階には客間、居間、台所、マシュウの部屋、2階にはアンの部屋、マリラの部屋、客用寝室、裁縫部屋、使用人の部屋があります。
プリンス・エドワード島は世界じゅうでいちばんきれいなところだって、いつも聞いていましたから。自分がそこに住んでいるところをよく想像していましたけれど、まさかほんとうにそうなるなんて夢にも思わなかったわ。想像していたことがほんとうになるって、うれしいことじゃない?
『赤毛のアン』(モンゴメリ著 村岡花子訳/新潮文庫)
赤毛のアンの舞台グリーンゲイブルズを訪れると、初めてプリンスエドワード島に来たアンの言葉を思い出さずにはいられません。
赤毛のアンの部屋

アンの部屋はグリーンゲイブルズ2階の東側にあります。りんごの花模様の壁紙や緑色のモスリンのカーテン、ベッドにはマリラ好み(!?)の地味な服、そしてドアにはマシュウがアンに贈った袖の膨らんだ服(パフスリーブドレス)が掛けられています。

アンがギルバートの頭の上で叩き割る石板や、アンがダイアナに合図を送る時に使うランプなど、赤毛のアンのエピソードにまつわる色々な小道具が置かれています。アンの家グリーンゲイブルズには物語の世界に誘い込む素敵な演出がいっぱいなのです。
アンが憧れた客用寝室

赤毛のアンが憧れた客用寝室はグリーンゲイブルズの2階にあります。当時の客用寝室は来客が寝泊まりする部屋というだけでなく、来客を迎え入れる際に身なりを整えてもらう場所でもありました。
「ダイアナがきたらお客様用の寝室へ帽子を置きにつれて行っていい?それから客間に行ってすわっていい?」
「いけません。あんたや、あんたのお客には居間でたくさんだよ。」
『赤毛のアン』(モンゴメリ著 村岡花子訳/新潮文庫)

アン憧れの客用寝室。物語の中には、「グリーンゲイブルズの古い客用寝室は、あたしにとって一種の神殿のようなものだったの」とアンがダイアナに語る場面も出てきます。
マリラの部屋

アンの部屋の斜め前にあるのがマリラの部屋です。真面目で几帳面なマリラらしい部屋には、あの紫水晶のブローチも置いてあります。大切なブローチが見当たらなくなり、アンがなくしたと勘違いしてピクニックに行かせないと言い渡すマリラ。疑いをかけられたアンはピクニックに行きたいあまりウソの告白をしてしまうあの紫水晶事件です。結局、大騒ぎした後に誤解が解け、アンはピクニックに飛んでいき”愉快きわまる時”を過ごします・・・。
肩かけはトランクの中の箱にはいっていた。マリラがとりだしたとき、窓べにむらがり茂っている蔦の葉ごしにもれさす日光が、なにか肩かけに、ひっかかっているものに当たった…それはきらきらと紫色に輝いた。マリラは仰天してそれをひっつかんだ。レースの糸一本にからまってぶらさがっているのは、紫水晶のブローチだった。
赤毛のアン(モンゴメリ著 村岡花子訳 / 新潮文庫)

紫水晶のブローチ、黒いレースの肩かけ、トランクの上に置かれたよそ行きのドレス…。「寝室はねむるための部屋だからよけいなものを持ちこまないように」と諭すマリラに、「あら、寝室は夢をみるためでもあるわ」とアンが言い返す場面がありますが、マリラの部屋に飾られた愛らしい小物を眺めていると、マリラも知らず知らずのうちにアンの影響を受けたのかなと思えてきます。
マシュウの部屋

マシュウの部屋は、グリーンゲイブルズの1階にあります。色褪せたパッチワーク・キルト、ベッドの上にさりげなく置かれた帽子やベスト、棚の上の白い水差しや洗面道具…。マシュウらしい質素な部屋です。グリーンゲイブルスにはアンの世界に誘う小道具が至る所にあって時間を忘れてしまいそう…。

とても内気な性格のマシュウは人付き合いが苦手。特に女性は”子どもであっても気味の悪い生きもの”と思っています。でも、アンとは初めて会った時からウマが合い、アンのおしゃべりを感心しながら聞いています。
どんな時でもアンの味方だった優しいマシュウ。素朴で温かい部屋に置かれた調度品を見ていると、「そうさな」と語りかけるマシューの静かな声が聞こえてくるような気がします。
裁縫室とミシン

グリーンゲイブルズ2階の裁縫室には、足踏みミシンや糸くり機などアンの時代を彷彿とさせる生活道具がたくさん展示されています。当時はまだ既製服がなかったので着るものはすべて手作りでした。
マリラは自分で仕立てをして、全部、おなじ型にこしらえた…ひだのない胴につづき、袖は胴やスカートとおなじように、なんのかざりもなくて、きちきちに細かった。
『赤毛のアン』(モンゴメリ著 村岡花子訳/新潮文庫)
マリラがアンのために用意したこげ茶色のギンガム、黒と白のごばん縞の綿じゅす、そしてごわごわしたいやな色の青い更紗を使った三枚の新しい服もミシンで縫ったのでしょうか。
”さっぱりとしてきちんとできてる”とはいえ、全然きれいじゃない服で毎日を過ごさなければならないなんて…。でも、アンは「この中の一つだけ、すてきなレースのひだがついて、袖が三つにくびれてふくらんでいる、白いモスリンの服だというふうに想像できるわ」と気持ちを切り替えていましたね。

普及し始めたばかりの足踏みミシンは当時の人気商品で、ミシン会社が配る販促用グッズに当時の少女たちはときめいていたようです。
(ダイアナは)あたしの部屋にはっとくように、とても美しい絵をあげるって、言ってたわ…空色の着物を着た美しい女の人の姿が描いてあって、ミシン会社の人がくれたんですって。あたしもなにかダイアナにあげるものがあるといいんだけど。
『赤毛のアン』(モンゴメリ著 村岡花子訳/新潮文庫)
使用人の部屋

グリーンゲイブルズの裏口の階段を上ったところに使用人の部屋があります。当時は春の種まきや秋の収穫などの忙しい時期に、住み込みの使用人を雇っていました。裏口のドアを開けてそのまま寝室に上がれる構造は、農作業を終えて帰ってきた使用人の使い勝手を考慮した機能的な作りになっています。
玄関ホールの階段

グリーンゲイブルズの玄関ホールから2階に上がっていく階段には、黒地にピンクや深紅の鮮やかな花が描かれた壁紙が貼られています。お洒落な色合いの壁紙ですが、当時は実用性重視で蚊やハエなどが目立たないように濃い色の壁紙を使っていたそうです。

グリーンゲイブルズの客間

グリーンゲイブルズ1階の玄関ホールの脇に客間があります。美しい調度品が飾られた客間はロマンティックな雰囲気です。モンゴメリが好きだったという暖炉の上には動物の対の置物や鳥の絵画などが整然と並んでいます。

グリーンゲイブルズの居間はマリラとリンド夫人がおしゃべりしながらよくお茶を飲んでいた場所…。「さあ、レイチェル。お茶にしましょうよ」「じゃあ、ごちそうになっていきましょうかね」楽しそうな二人の様子が目に浮かびます。
来客用食堂

グリーンゲイブルズ1階の客間の隣りにあるのが来客用の食堂です。物語と同じくテーブルには薔薇模様のお茶道具が置かれています。アンがダイアナを招いてお茶会を開く時、「あの、ばらのつぼみの小枝のついたお茶道具をつかっていい?」とマリラに尋ねるあの茶器セットです。物語の中では「とんでもない!あれは牧師さんか、後援会の集まりのほかは使わないことになっているんだよ」とマリラにたしなめられますが、美しくセッティングされたテーブルは今にもお茶会が開けそうです。




グリーンゲイブルズの台所

グリーンゲイブルズの1階にある台所には当時のキッチン道具がたくさん並んでいます。台所のそばには保存場所として使われていたパントリーもあります。作り付けの棚には、あのいちご水の瓶が!アンが葡萄酒と間違えてダイアナを酔わせてしまう事件を思い出します。
ダイアナはコップをなみなみとつぎ、その美しい赤い色を感心してながめてから、上品にすすった。「これはすごくおいしいいちご水ね、アン。いちご水ってこんなにおいしいものだとは知らなかったわ」
赤毛のアン(モンゴメリ著 村岡花子訳 / 新潮文庫)
グリーンゲイブルズの納屋

グリーンゲイブルズの2階の窓からは大きな納屋や木々が見えます。「…家のまわりにぐるっと木がうえてあるっていうんで、前よりももっとうれしくなってしまったのよ。木が大好きなんですもの」と、グリーンゲイブルズに向かう途中、アンがマシュウに話す場面を思い出す光景です。
現在、納屋の中には昔の農場の暮らしを解説した展示室があり、モンゴメリの生涯をたどるビデオも上映されています。グリーンゲイブルズの広い敷地内にはギフトショップもあり、プリンスエドワード島ならではのお土産を買うことができます

グリーンゲイブルズには、当時マクニール兄妹(モンゴメリの祖父のいとこ)と養女マートルが住んでいたそうです。老兄妹と少女の家族構成は、アンを引き取ったマシュウとマリラによく似ています。きっと日々の暮らしの中から生まれた様々なエピソードがモンゴメリ作品の物語の種になっているのでしょうね。
モンゴメリが暮らしていた祖父母の家はグリーンゲイブルズから歩いて行ける場所にあったそうです。モンゴメリはグリーンゲイブルズが大好きでよく訪ねていたそうなので、行き帰りの道すがら、物語の構想を考えながら歩いていたのかもしれませんね。
グリーンゲイブルズ周辺には、恋人の小径やお化けの森など物語に登場する場所が点在しています。小鳥のさえずりが聞こえるのどかで静かな村キャベンディッシュは、アンの世界に浸るには絶好の場所!アンの息づかいさえ聞こえてきそうな「グリーンゲイブルズ」は、 赤毛のアン・ファンにとって絶対見逃せないスポットです。
グリーンゲイブルズの基本情報
グリーンゲイブルズ Green Gables
住所: 8619 Cavendish Rd, Cavendish, PE C0A 1M0 カナダ
TEL :(902)963-7874
営業時間: 9~17時
定休日: 夏期以外は日曜、月曜 12月上旬~4月中旬
料金:大人 $3.90~ $7.80 ※季節により変更
アクセス:シャーロットタウンから車で約40分
https://www.tourismpei.com/green-gables-house
最後に
「赤毛のアン」の舞台でありモンゴメリの故郷でもあるプリンスエドワード島には、グリーンゲイブルズ、恋人たちの小径、お化けの森など物語ゆかりの場所が実存し、物語の世界に浸ることができます。アン・スピリット溢れる美しい島へ、ぜひ一度訪れてみてはいかかでしょうか。
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